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2007年2月17日 (土)

葛藤型

 母が父を責めるときの言い分の代表格は、「ただいまと言っても返事をしてくれない」だ。それに始まってあれこれ「無視された、ひどい人だ」となる。それに対して父は、事実と違うことを言われ、必死で自己防衛する。「そんなひどいことはしない、それどころか、あなたのためにあれもした、これもした」と。ところが母にとっては父の言う「あなたのために」は「あなたのせいで・・しなければならない」と感じられるようだ。どちらの気持ちも互いに受け止められず宙に浮き、二人は感情的になり収拾がつかなくなる。
 なんでそんなにガチガチに「自分」を守らねばならないのか、もっと柔らかく感じられたら楽なのに、と思う。でも自分を振り返っても簡単にそうはいかないのはよくわかる。人にとって、「自分を認めてほしい」気持ち、自分確認の気持ちは、本当に手強い。
 三好春樹が「認知症の生活の場の3分類」と呼ぶものがある。竹内孝仁の「介護基礎学」(医歯薬出版)にある「葛藤(かっとう)型」「回帰型」「遊離型」のことだ。どうやら、私の親の場合は被介護者も介護者も葛藤型のようだ。認知症現代型か・・・。

 「・・・かつての若かった自分を取り戻そうとして頑張るのだがうまくいかず、どうしていいかわからなくて混乱しているのが葛藤型だ。周りの人に暴言を吐くこともあるが、何より現実の自分にいら立っているのだ。
 自分を取り戻す代わりに、心の中で過去に帰って自分を確認しようとするのが回帰型だ。徘徊(はいかい)や人物誤認、いま、ここがわからなくなるという、認知症でよく語られる状態が表れるのがこのタイプだ。
 一方、現実に耐えきれず、自分だけの世界に閉じこもることで自分を守ろうとする人もいる。遊離型だ。自分からは何もしなくなり、会話も難しくなってそのうち独り言を言い始める。
 この3分類を初めて知ったとき、竹内氏は私が勤めていた施設を観察していたに違いない、と思った。それほど老人の実態を表しているのだ。私たちはこれを「認知症の生活の場の3分類」と呼ぶことにした。(三好春樹=「生活とリハビリ研究所」代表)(2007年2月13日 読売新聞)」

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